同じとんこつでもこうも違う。福岡県・熊本県・鹿児島県のラーメンを検証
九州で生まれ、今や世界にまで知られている「とんこつラーメン」
とんこつラーメン=博多ラーメンと思っている人もいるのではないでしょうか。
それは間違いなのです。
今回はとんこつラーメンをより細分化して紹介します。
「意外と知らない九州ラーメン事情」を考察します。
意外にあっさりな博多ラーメン
博多ラーメンは、すべてのとんこつラーメンの座標軸とも言える存在です。濃厚でこってりな印象が強いのですが、博多長浜の屋台街で出されるラーメンは、あっさり風味のスープで出される店が少なくありません。
麺は極細のストレートのため延びやすいのです。
でsから大概の店は麺の量が少なく、替え玉をすることが前提になっているのです。
替え玉を注文する時は、「やわめ」「硬め」など硬さを指定するのが普通です。
最強の硬めは「粉落とし」と言われるのですが、これはほとんど生麺に近いです。
トッピングはネギや紅しょうが、きくらげ、高菜唐辛子などがメジャーどころと言えるでしょう。
ちなみに博多ラーメンの更に元祖は、久留米で花開いた久留米ラーメンです。
博多ラーメンよりも濃厚でくせが強いことが特徴となっています。
博多ラーメンでは多くの店で麺のボリュームは少なく、替え玉をすることが多い
<博多ラーメンはスープは店によって違う>
博多ラーメン激戦区の天神で店を構える「元祖赤のれん 節ちゃんラーメン 天神本店」の瀬戸茂也(しげなり)さんに、博多ラーメンの定義について聞いみました。
すると、「博多ラーメンはスープが濃厚だと皆さんに思われていますが、それは店によって違います。うちの場合はあっさり風ですが、それぞれの店で異なっているのです」とのことです。
節ちゃんラーメン 天神本店
福岡県福岡市中央区渡辺通5-24-26
焦がしニンニクが香る熊本ラーメン
博多ラーメンとは似て非なる一品が、熊本ラーメンです。
麺は博多ラーメンほど細くありません。
どちらかというと中太麺で、替え玉文化はさほど定着していないようです。
中太麺を使って、替え玉という文化は薄いのが「熊本ラーメン」です。
一般的に熊本ではダシに「豚のアタマ」だけを使うと言われています。
スープは博多と同じとんこつなのですが、鶏ガラをブレンドするのがベーシックです。
ですから一般的には博多ラーメンよりマイルドだと思われています。
ちなみにスープはその日のうちに使い切るのが主流です。
継ぎ足しをしないので、とんこつ臭は少なめです。
味にアクセントを加えるのはニンニクを揚げた油(マー油)です。
これが強烈な個性を発揮して、食欲を倍増させるのです。
熊本ラーメンの老舗店「大黒ラーメン」の中川博文(ひろふみ)さんに、一般的な熊本ラーメンの定義について聞くと、「一般的に熊本ではとんこつのダシには豚の頭だけを使います」と言うことです。
「ゲンコツなども使う博多ラーメンに比べて密度が濃くなり、香りも良いと感じますね。その風味と焦がしニンニクとの相乗効果がクリーミーな味わいを作り上げると思います」。
それを受け止める中太麺も、博多ラーメンとの大きな違いと言えます。
「具材のきくらげは博多では入ったり入らなかったりですが、熊本では必ず入るんですよ」とのことです。
大黒ラーメン
熊本県熊本市高平1-1-14
ラーメンの前には漬物を、鹿児島ラーメン
鹿児島はとんこつラーメンの本場・博多から遠く離れているため、とんこつラーメンの影響が薄いことが何よりの特徴となっています。
スープも必ずしも白濁していません。独特の個性を発揮しているのです
スープはベースこそとんこつなのですが、鶏ガラはもちろん野菜、昆布、煮干しなどのダシをブレンドしています(このあたりは店ごとの個体差が激しい部分です)。
ですから必ずしも白濁しているわけではありません。麺は沖縄そばのような太麺かビーフン由来の細麺があるのですが、かん水を使っていない店が多いようです。
他の特徴としてはなぜか小さな急須に入ったお茶が出ることと、付け合わせに大根の漬け物が出されることでしょう。これらはラーメンが出されるまでの酒のアテとしても重宝します。
鹿児島ラーメンの名店「くろいわ本店」の日高百合子さんは、「鹿児島のラーメンを大まかに概観すると、やはりあっさり味と言えるでしょう。とんこつだけどあっさりしてる。鶏ガラも使っていますからね」。
やっぱり漬け物は付くのですか?という質問に、「ええ、普通は付きますよ。うちの場合は大根の漬け物ですが」とのコメントをもらいました。
博多、熊本、そして鹿児島、細かく見ていくとまだまだ他にも違いはたくさんありそうです。
いまや東京や大阪などの都市部でも、九州の各エリアのラーメンを味わうことができます。
地元のラーメン店経営者たちのコメントも参考にしつつ、エリア毎の食べ比べをしてみるのも楽しいかもしれません。