ラーメンに関する最新ニュースはラーメンニュース

ラーメンニュースは、新聞・通信社が配信するニュース提供元からラーメンに関する最新情報のほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。



ラーメン店の経営にも慣れてきた二年目の春。


ラーメン店も最初の頃の苦境を乗り越えて経営も安定してきたら、経営ノウハウ本を読むようになります。
店を繁盛店にするには勉強する以外に方法はないとわかっているからです。
そうした本の中で一番心に残った言葉を実行に移すことを心がけていました。
それは、「店側のひとりよがりはなんの意味もなさない。お客様に満足を与えることを第一義に考えるべきだ」
 あなたはお客様が食事中に話す会話を聞き逃さないように神経をとがらせます。またお金を払うときに何気なく言う言葉を心に留めておくのです。
・丼モノがあればいいんだけど。
・ビールの種類を増やしてほしい。
・営業時間をもっと長くしてほしい
 この三つが常連客の要望の大半だったのです。ラーメン専門店ですのでラーメン以外はメニューにありませんでした。常連客が「たまには違う種類の食事もしたい」と思って当然です。ビールも好みに差があります。メーカー間の味には違いがあるからです。さらに同じメーカーであってもブランドによって味が違います。常連客は各自自分の好きな銘柄を希望してきます。営業時間は今までは十一時でしたが「お風呂帰りにも寄りたい」と言っていました。仕事で遅くなって店の前を通るとき「電気が消えていると寂しい」とも言われたのです。
早速要望に応えようと行動を起こすと思います。どれもそれほど難しい要望ではありませんでしたから。
敢えて言えば「丼モノ」を作ることでしょう。業務用のレトルトを利用することも考えましたが、厨房の隅々まで知っている常連客には業務用とはいえレトルトを出すわけにはいかないという結論に達します。あなたは本で調べ勉強して親子丼とカツ丼を作れるようになったのです。
あとの二つ、「ビールの種類を増やす」ことはあなたの店に卸している酒屋さんは喜んで応じてくれましたし、「営業時間の延長」は単純に自分たちの労働時間を二時間ほど増やせば済むことです。今までの労働時間が十二時間でしたので二時間増えるくらいはなんともないことだったのです。
このように三つの要望を取り入れたときに常連客はとても喜びました。今まで週に一~二回の来店だった頻度も毎日と言っていいくらい来店するようになったのです。また飲むビールも毎回違う種類を注文するようになりました。ただし営業時間の延長はあまり効果があるとは言えませんでした。延長した営業時間に全くお客様が来ないことはなかったのですがその数はわずかなものだったからです。遅い時間帯の仕事帰りなので入口のところであいさつはするものの食べて行くわけではなかったからです。みな仕事で遅くなったときは会社近くの飲食店で食べていたのでした。
約三ヶ月後、定休日に畳に寝ころんでいると奥さんがあなたに話しかけます。
「最近、月末になってもお金があまり残らなくなったのよ」
「おかしいな。売上げは落ちてるわけじゃないし、営業時間を伸ばしたんだから売上げは増えてるはずなんだけど・・」
そのときは結局理由はわかりませんでした。しかし月末に手元に残るお金が減っているのは事実だったのです。
ある日、あなたは青色申告会から送られてくる冊子を読んでいて気になることを発見します。
「在庫はできるだけ少ないほうがよい」
常連客の要望を取り入れてから材料代が増えていることが気になっていました。そしてそのまま在庫が増えていることもわかっていたのです。きちんと収支計算などをしていたわけではありませんが、毎日店にいるとわかるものです。あなたはメニューの種類を増やしたことが収入を減らしていると実感した瞬間だったのです。

約半年後のある日、朝起きると奥さんがうなっています。
「どうした?」
「なんか身体が重たい…。熱もあるみたい」
お店を休むわけにもいかずその日は薬を飲ませなんとか店に出します。しかし午後になりやはり立っていることもできなくなり医者に行くことにします。そこで医者に言われたのです。
「大分身体に疲れが溜まっているみたいですね。しばらく安静にしていてください」
「でも店が…」
「なにを言ってるんです。倒れたら店もなにもないじゃないですか!」
あなたは奥さんの顔を見つめます。
結局奥さんは一週間店を休むことになりました。その間は親類にお願いしてなんとか店の営業を続けました。もちろん営業時間は大幅に短縮しての営業となりました。しかしそれでもいつまでも親類に頼ることはできません。親類とはいえ無理をお願いするのは一週間が限界です。五日目にやんわりと言われたのです。
「私、いつまで手伝えばいいのかな?」
あなたは奥さんと話し合います。
「やっぱり営業時間を延長したのが響いたんだな」
「あなたはたったの二時間と思うかもしれないけど私にとってはその二時間がすごい大変だったのよ」
あなたは丼モノを増やしビールの種類を増やしたことが店の利益に悪影響を与えたことを話します。丼モノを作るために新たに材料を仕入れなければならなくなたこと、最初の頃こそ丼モノを珍しがって常連客も来てくれたのですが、一ヶ月もすると元の来店頻度に戻っていました。またビールの種類が増えたことによってビール全体の在庫が増えたことが利益を減らしていたことも説明しました。
ビールの種類が増えたからと言ってビールの売上げが上がったわけではなかったのです。
お客様の要望に応えることは大切だけど結局自分で自分のクビを絞めていたことになっていたということです。