最近よく見る「横浜家系ラーメン」っていったい何?
元々屋号に「家」とついていることが多かったことから、家系と呼ばれるようになりました。店名の「家」はほとんどが「や」と発音しますが、「家系」は「いえけい」と発音します。
豚骨や鶏ガラから取ったダシに醤油のタレを混ぜて、鶏油を浮かべた「豚骨醤油ベース」のスープ、コシのある太麺と、小松菜(お店によってはほうれん草)、チャーシュー、海苔のトッピングで構成される家系ラーメンを出すお店は、国内とアジアを中心に約1000店舗あるとされています。そのうち、横浜市内には、約150店舗あるということです。
創始者の吉村実は宮大工から始まり、床屋の見習いなど様々な職を転々とした後、長距離トラックの運転手を務めていました。ある日吉村は「九州の豚骨と東京の醤油を混ぜたらおいしいのでないか」と思い立って、平和島(東京都大田区)のトラックターミナルにあった「ラーメンショップ」を半年間手伝った後1974年に横浜市磯子区・新杉田駅近くに開店した吉村家が起源とされています。
産業道路に面して、石川播磨重工業(現・IHI)をはじめとする工場密集地帯の立地から、工場労働者やトラック運転手などの間で評判になっていったということです。吉村は1974年に開業した本牧家で修行を重ねていましたが、店長を務めていた神藤隆は独立し、1988年には東白楽駅近くに六角家を開業する。他の弟子たちも本牧家を辞めたため、怒った吉村は本牧家を一時営業中止し、新聞沙汰にもなったのです。
家系ラーメン店の多くは、客の要望に応じて、醤油味の濃さ、スープの脂の量、麺のゆで加減を調整して作るサービスや、卓上の調味料(おろしにんにく、豆板醤、ショウガ、ごま、胡椒、酢など)を客が自由に盛ったりできるサービスが行われていることが多いです。
なお、吉村家又はその系列の店で修行したことを「家系」の絶対条件とし、味がよく似ていてもそれ以外は亜流とする考え方もあります。 知名度の上昇に伴って、関東地方を中心に吉村家の系列ではない家系、あるいは横浜ラーメンを呼称する店が増加しているのです。
全国には約3万3000軒のラーメン店があるといわれています。人口10万人あたりの店舗数が最も多いのは意外にも山形県だが、出店の密度でいえばやはり東京の高田馬場や池袋、新宿の駅前になるだろう。
これらの繁華街で最近、横浜家系ラーメンの店舗が増えているのです。
都内に直系はない!?
横浜家系ラーメンは、豚骨ラーメンと鶏油(ちーゆ)、濃い醤油ダレなどが組み合わさってできたスープとコシのある太麺が特徴で、ホウレンソウとチャーシュー、海苔をトッピングするのが基本形となっています。
総本山は1974年創業の「吉村家」(横浜市西区)。暖簾分けを許された直系は意外にも少ないのです。 「杉田家」(同磯子区)、「横横家」(同金沢区)、「末廣家」(同神奈川区)、「まつり家」(神奈川県藤沢市)、「厚木家」(同県厚木市)、「はじめ家」(富山県魚津市)などがあります。
家系の流派はこれだけではない
吉村家で修業しつつも独自に開業したり、そこからさらに分派した店は数えきれません。
その代表的存在といえば神奈川区の「六角家」です。ここは東京都台東区と千葉県船橋市にも支店を出しています。
このほか家系ファンの間で有名なのは「近藤家」「介一家」「横濱家」の3家です。中でも横濱家は神奈川と東京に21店舗を展開している大手となっているのです。
吉村家と直接接点のない人物が横浜家系を名乗る、インスパイア系も数多く存在しています。
例えば、横浜市磯子区にある「壱六家」は、吉村家に触発されて1992年に誕生しました。家系フリークのあいだでは「壱系」と親しみをこめて呼ばれているお店なのです。
東京都新宿区のマックグループは傘下に「壱角家」を有しています。焼き牛丼で一世を風靡した東京チカラめしの68店舗を譲り受けて、壱角家を中心とするラーメン店という別業態に転換させたのです。
2015年3月放送の「スーパーニュース」でもこの話題が取り上げられていました。
番組の取材に応じたチカラめしの國松晃CEOは、東京だけで100店舗はいけると主張しています。手間のかかるスープなどは工場で作り、店員がマニュアル通りに調理することで味のブレをなくしているというのです。
壱角家西新宿本店に来てみると、ヨドバシカメラ新宿西口本店のすぐ近くにある同店は、家系ラーメンを看板に掲げる一方で、博多とんこつラーメンや東京名物油そば、チャーハンも提供しているといったバラエティに富んだお店でもあるのです。
家系のフランチャイズも増えている
ネットで「家系 FC」をキーワードにして検索すると、家系ラーメン店の開業を支援するサービスがいくつかヒットします。例えば、「松壱家」(藤沢市)の開業パッケージには最短18日の研修で味をマスターできると書いてあるのです。
ラーメンという食べ物は、世界各地の料理のエッセンスを貪欲に吸収しつつ、「誰もが気取らず食べられる庶民のグルメ」として今も進化を続けています。