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ラーメン店経営で少しずつ貯金もできるようになった三年目の冬のこと



あなたは朝、目が覚めると奥さんがまだ起きて来ないことに気がつきます。いつもならあなたより先に起きて朝ご飯の準備をしている奥さんがまだ隣の布団の中で横になっていたからです。
「どうしたの?」
「なにか熱があるみたい」
その日はあなたが朝ご飯の準備をして後片づけもしてなんとか奥さんを店に連れて行きました。あなたとしても奥さんを休ませたい気持ちはあるのですが現実問題として一人でラーメン店のピークタイムを捌くのは無理だったからです。あなたは開店準備もできるだけ自分一人でやって奥さんにはできるだけ身体への負担がかからないように配慮しました。営業時間が始まっても奥さんの身体の調子は芳しくなく「立っているのもやっと」という状態だったのです。
なんとかその日の営業を終えたあとで、あなたが暖簾をしまって店内に戻ると奥さんはテーブルの上に伏していました。
「大丈夫?」
あなたの声に奥さんは返事をすることもできません。あなたは奥さんを抱きかかえるようにして家に着きます。奥さんは布団に倒れ込むようにもぐりこみました。あなたは奥さんを着替えさせて風邪薬を飲ませると、明日の両替の準備をします。いつもは両替は奥さんの役目でしたが、今の奥さんにそんな余裕はなかったのです。
準備をしながらあなたは思いました。
「そう言えば一週間前から身体が重たいと言っていたな。本当は休ませてあげたかったけど代わりの人なんか急に見つからないし…。後悔もある。定休日の昨日、問屋なんかに行かずに家で寝させておけばよかった…。明日大丈夫かな…」
翌朝、やはり奥さんの体調は回復していませんでした。それでも奥さんは「休むわけにはいかないから行く」と言います。あなたは奥さんの言葉に安心してフラフラの奥さんと店に行ったのです。
昨日同様、開店準備はあなたがほとんどやって営業時間を迎えます。奥さんの身体の調子が昨日より悪いのは明らかでした。お昼のピークタイムを過ぎると奥さんはトイレに引きこもります。あなたは三十分経っても出てこない奥さんが心配になってトイレのドアを叩きます。
「大丈夫か?」
返事の代わりに鍵を開ける音がしました。しかしドアが開く気配はしません。少し待ったあとあなたはノブを回しゆっくりとドアを開けます。そこにはトイレの床に倒れ込んでいる奥さんがいたのです。
あなたはコトの重大さを感じて、すぐに奥さんを近くの診療所に連れて行きます。診療所の待合室には順番を待っている人がいましたが、あなたは看護師さんに事情を話して順番を飛ばして診てもらうようにお願いしたのです。
六十才くらいの白い髭を生やした先生は奥さんを診察したあとあなたに言いました。
「どうしてこんなになるまでほっといたの?」
あなたは返事ができずただうつむいているだけでした。先生は「近くの大学付属病院を紹介します」と言い、救急車を手配してくれたのです。
付属病院で検査をした結果、すぐ入院することになります。あなたは入院の準備をしながら思います。
「俺が無理をさせすぎた…」
入院一週間を過ぎたときあなたは先生に呼ばれました。
「今回入院していただいたのは検査結果が悪すぎたからですけど、大分安定してきましたので明日退院しても構いません。でも奥さんは無理をするとすぐに倒れる体質ですから気をつけてください。とりあえず三ヶ月間は絶対安静にしてください。約束できますか?」
あなたはこうやってラーメン店に失敗してしまうのです。
今回の例は病気でしたが、どちらかが交通事故など思いも寄らぬ怪我を負って身体的精神的な理由で店に出られなくなって廃業に追い込まれることもあるのです。

<借入金の返済が終わって心の余裕ができた四年目>。
あなたは奥さんに楽をさせたいと思い、パートさんを雇用することを考えます。求人広告に掲載するにはお金がかかるので店頭に貼り紙を出します。すると張り出して一週間目に五十才くらいの女性Dさんが応募してきたのです。
あなたは応募があったことがうれしい心境です。面接をするとそれほど悪い性格でもなさそうです。さらに「ひとり暮らしなので日曜日も出勤できる」ということが決定打となりました。あなたは「是非、お願いします」と採用することにしたのです。
初めての出勤日、Dさんは遅刻してきました。Dさんの住居は店からそう遠くない場所ですのであなたは理由を尋ねます。しかし要領を得ない返事しかしません。あなたはちょっと怒りを覚えましたが、初日ですのでそこは我慢したのです。
初日ですので仕事をいろいろと教えたのですが、なかなか覚えられません。「覚えられない」というより「覚えよう」という態度が見られないのです。仕事に対する積極性が感じられません。
あなたはその日の夜、奥さんに相談します。いくらパートとは言ってもやはり仕事です。それなりに責任感を持って一生懸命に働いてくれる人を雇用したいと考えたからです。あなたは採用を取り消すことを決めました。
翌日、Dさんはまた遅刻してきました。あなたは彼女をテーブルの椅子に座らせて告げます。
「申し訳ないけど、ウチとは合わないみたいなので採用を取り消させてください」
彼女はうつむいたまま返事をしません。あなたは一日分の給料を入れた封筒を渡して引き取ってもらいます。
Dさんが帰ったあと奥さんと今後について話し合いました。「やっぱり他人を雇うのはやめよう」と決めて奥さんも納得しました。あなたは奥さんに「頑張ってもらう」ことにしたのです。



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