ラーメンに関する最新ニュースはラーメンニュース

ラーメンニュースは、新聞・通信社が配信するニュース提供元からラーメンに関する最新情報のほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。



これは太い!愛知の名古屋名物「きしめん」の極太麺


古参の名古屋名物でありながら、昨今の「名古屋めし」ブームに完全に乗り遅れた感のある食べ物。それが、きしめんです。
きしめんはそもそも、何故に名古屋名物なのかも判然としないのです。
ルーツも諸説あるのですが、どれも決め手に欠けています。
第一、うどんに比べて、ナゴヤ人自体そんなに好んできしめんを食べている訳ではないことは、多少でも名古屋に住んだことのある人なら、実感として分かるでしょう。

それでは、きしめんには魅力がないのか?きしめんはダメなのか? 
そんなことはありません。
あの平麺ならではのツルツルっと口に入っていく喉越しは、きしめん以外では味わえない食感なのです。
パスタのフェットチーネも、山梨名物のほうとうも、姿形こそきしめんに似ていますが、この醍醐味(だいごみ)は到底味わえないのです。
新幹線のホームで食べるきしめんがうまいのは、待ち時間の間にツルツルっと食べるシチュエーションも影響しているのかもしれません。

極太のきしめんは絶滅寸前なのか!?

以前、とあるうどん店で聞いた話なのが、きしめんの麺の幅広さには「時代の流行」があるということです。
理由は定かではないのですが、恐らくほかの麺類の流行がきしめんにも影響しているのだそうです。
となると、二郎系ラーメンや油そばの太麺がはやっている今の時代でしたら、「極太」が流行の最先端なのでしょうか。
実は名古屋には「まるみ亭」という極太きしめんを提供する店があったのですが、数年前に惜しまれつつ閉店してしまいました。
まるみ亭に代わる極太きしめんの店を探すと、それは名古屋市熱田区の中央卸売市場の中にありました。
その店の名は「まんてんうどん」です。市場内の店らしく、営業時間は朝4時から昼の2時までとなっています。

力士も大満足の食べ応え

「はい、これがきしめんの麺」。そう手渡された麺の幅を定規で測ると、なな何と、ジャスト3センチです! 
厚さも2ミリはあろうかといったところです。
太っ!これは予想以上です。
まんてんうどんの主人、大西景三さんに話を聞きます。
ここで店を開いて9年になるのですが、実はそれ以前に、親御さんも別の場所でうどん店を営んでいたそうです。相撲が大好きで、力士にうどんをごちそうしたところ「普通のうどんは食べた気がしないが・・」と言われ、発奮して開発したメニューがこの極太きしめんだったということです。
それが20年前。「製麺屋に刃を特注して作ってもらった」というリキの入ったこのメニューは息子に引き継がれ、名古屋でも随一の極太麺として光を放っているのです。

普通のきしめんは平べったいので、うどんよりもゆで時間が短いです。
しかしこの麺は真逆となっています。極太だけあって、ゆで時間は実に20分かかるということです。
そのため、事前に固ゆでして、オーダーが入ってからもう一度ゆでています。冷やしにすると、もっとゆで時間が必要となります。

2回茹でることにより、提供時間を短縮している

話をつゆに移します。名古屋のめんつゆは独特です。
黒っぽい色こそ関東風なのですが、その実、ダシの主体はかつお節ではなくムロ節(ムロアジ)やササ節(宗田ガツオ)から取られている。
かつお節よりもさっぱりとした味わいで、これに名古屋ならではのたまりじょうゆの本返しを投入します。
やや濃い口で少し甘めの「名古屋風つゆ」の完成です。
大西さんもいろいろ試したそうですが「市場の人は昔ながらの名古屋の味を好む」ということで、結局のところ「ナゴヤスタンダード」に落ち着いたということです。
このつゆこそ、極太きしめんをがっしり受け止めるベストパートナーなのです。

"極太"だからこそ実現できる、ツルツル&モッチリ感

いよいよ実食。出来上がった極太きしめんはだしの香りが高く、それだけで食欲を大いにそそります。
自分の口の幅は約6センチ。それに対し、極太きしめんの幅は前述の通り3センチです。

ズズズーではなく、ツツツうぅ?と"見えざる手"に導かれるように口の中に吸い込まれていくきしめんです。
しかし厚さもハンパありません。
ツルツル感に加えて、独特のモッチリ感がきしめんを新たなステージへと導いていくのです。トラッドなつゆが麺に程よく絡んで、しっかり名古屋の味としてアピールしているのです。

具はかまぼこ、わかめ、ねぎにしょうがとシンプル。極太めんにつゆがたっぷりからみあいます。
極太きしめんの冷やし麺(名古屋では「ころ」と呼ぶ)も味わってみました。つゆはざると同じもので、カツオをきかせて、かけよりも濃厚で風味が強いのです。冷水でキュッと締められた麺は、かけ以上になめらか。そして麺本来の強さが際立つ。麺の圧倒的な存在感に脱帽しました。

開店当時は、知る人ぞ知るメニューで、手がかかるし、注文も出ない。という訳で、休止していた時期もあったそうです。
しかし親から受け継いだ大切な味。「とにかく出そう!」と決めて再開し、今は根強いファンもつくようになったということです。