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リアリティの追求~メディアとしてのラーメン


1960年(昭和35)12月に発行された『暮しの手帖』57号では、「即席ラーメン」の食べ比べの企画が組まれています。誌面には、「共通していえることは、名前はラーメンでも、これまで私たちの舌になじんできた中華料理のあのラーメンの味でもなければ、チャルメラのラーメンの味ともちがうことです」という評価がみえます。
『暮しの手帖』は、71年6月に「インスタントラーメンの食べくらべ」というタイトルで、再び即席ラーメンにスポットをあてています。そこでは「即席ラーメンは名前こそラーメンとついているからまぎらわしいのですが、じつは中華そば屋のラーメンとは似て非なる、全く別の麺類であると考えていいでしょう。(中略)だから、堂々としていいのだ。いまはまるでラーメンのまがいもの、本当はラーメンにかなわないのだけど、こんなに似せることができました、といってトクトクとなっている感じがするのです」とあります。
この二つの記事から、11年のあいだで、即席ラーメンはインスタントラーメンと呼ばれるようになっていて、その存在が社会的に認知されていった状況と、インスタントラーメンがラーメンらしさを追求していった姿とえることができます。
61年に即席めんの市場に参入した群馬県前橋市のサンヨー食品は、当時主流の味付き・油揚げの製品を自社開発しましたが、販売不振によって大手の缶詰会社である日魯漁業のブランドを冠した「あけぼのラーメン」を発売し、経営体力を養ってから63年に自社ブランドで「ピヨピヨラーメン」を発売して、景品付きセールやテレビコマーシャルなどの営業努力によって、即席めん製造メーカーとして、首都圏で一定の存在感を示すようになったのです。そのサンヨー食品が64年に発売した「長崎タンメン」は、同社を全国区のメーカーに押し上げる大ヒット製品となりました。
ヒットの要因は、コマーシャルや販売拡張の努力もさることながら、それまで醤油の濃厚な味で占められていたラーメン市場に、淡白な塩味を提供したところにあります。そして味のイメージを、中華料理の「タンメン」という具体的な名前であらわして、特徴を引き立たせるため、長崎の地名を冠するという戦略が成功したもので、業界にタンメンブームを巻き起こしたのは当然の結果となったのです。同社は、この商品で東京地区でのシェア1位を獲得して、66年、スープ別添えの「サッポロ一番しょうゆ味」を発売します。こちらは札幌ラーメンの味をめざした濃厚な醤油味で大ヒット、以降、68年の「サッポロ一番みそラーメン」ではみそラーメンブームを湧き起こし、70年に「サッポロ一番とんとんめん」(とんこつ味)、71年に「サッポロ一番塩らーめん」と、各地で異なるラーメンのイメージを捉えて製品の多様化を進めていき、ブームの推進役となっていったのです。インスタントラーメンは、「らしさ」―リアリティをセールスポイントに加えることによって、各地の特色のあるラーメンの味を知らせる、情報メディアとしての役割を持つようになったともいえるだろう。
インスタントラーメンのリアリティへの挑戦は、このように袋めんのスープの粉末化という技術革新から始まったのです。一方、麺の部分では、68年にノンフライの「サッポロ柳めん」(ダイヤ食品)が出て、油分を補う液体スープとともに普及していき、生麺に近いのど越しと歯ざわりを追求した麺の開発への努力は、81年の「中華三昧」(明星食品)の大ヒットへ連なっていったのです。そして「中華三昧」は、「四川風」「広東風」「北京風」という味の種類があらわしているように、ラーメン店のラーメンではなく、高級中華料理店の「らしさ」を消費者に伝えました。
一方、麺を煮込む方法を取らないカップめんの方では、まず、フリーズドライで作られる具の部分に、リアルさが求められていきました。具によって名前の変わる日本そばやうどんのインスタント化はその表れといえるし、ラーメンにつきもののチャーシューのフリーズドライ化への努力からも、具材のリアルさが追求されていった姿をみることができます。

調理方法の面で制限の多い麺の部分においても、昭和51年にカネボウから「ノンフライタンメン」が出て、ノンフライ化が進んでいきます。平成元年には、生タイプの麺をロングライフ加工したLLタイプの「真打うどん」(島田屋本店)が人気を得て、1991年(平成3)に「夜食亭」(明星食品)、92年に「日清ラ王」が登場して、生タイプのカップめんの市場が急成長したのは記憶に新しいところです。2000年には、日清食品とセブンイレブンの共同開発による「日清名店仕込み」が発売されて、話題の店の味にせまった「ご当店ラーメン」が人気を得て、ここにいたってインスタントラーメンのもつ情報メディア性は、よりはっきりと見えるようになったのです。



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